トレーダーには技術がつくる「安全」と心がつくる「安心」がある。

まず始めに、トレードにアスリートのようなメンタル強化が必要か否かについて。

個人的にはトレード技術は自動車運転技術と同じでメンタル強化は不要と考えます。

トレードもドライブと同じくらい低いレベルのストレスに抑えるのが理想で、いかにメンタルに負荷をかけずトレードできるか工夫すべきです。

神経をすり減らしてまで、トレードも運転もしたくありません。

トレードに過度のスリルを感じるのは、まだ運転技術が身についてないか、適切な資金管理をせず、無暗に枚数を増やすからでしょう。

いつも通りにする。

これが大事で”いつも通り”がつくれない人は、いつまでもメンタルに負荷がかかります。

それと、コンスタントに勝てる人とそうでない人は、チャートをみる景色がちがいます。

同じチャートを見ての”認知力”に差があります。

認知力を鍛えるほどに、メンタル=意志力は不要になり、意識しなくても自然にやれるようになります。

この辺の話はメンタルってどう鍛えるの?を参考にしてください。

さて、今回はトレードの学習も含め、障壁をブレイクスルーするには、こういう感覚が必要というお話です。

今、行き詰まり感や強いストレスに苛まれているなら、今からお伝えする3つの感覚が弱まっているかもしれません。

もしそうなら、まずそれを自覚して取り戻すことから始めるといいでしょう。

首尾一貫感覚(sense of coherence、SOC)

アーロン・アントノフスキー著『健康の謎を解く、ストレス対処と健康保持のメカニズム』によると、強制収容所から生還した女性の3割に共通していたのが、この”首尾一貫感覚”だそうで、次の3つの感覚からつくられます。

全体把握感

「だいたいわかる」という感覚。

いわゆる「鳥の目」のことですね、俯瞰できれると慌てなくなり、焦りの感情によるミスが激減します。

鳥の目を持つ人は、たとえ押し目が崩れても買い目線固定のまま、一段下の押し目を待てますが、虫の目の人は、慌てて売って鳥の餌になります。

 

鳥の目を持つ人は、上位足レジスタンスで多少短期足がオーバーシュートしてもロウソク足終値確定を待てますが、虫の目の人は、慌てて買って鳥の餌になります。

全体把握感があると自分の置かれた状況から展開を予測できるので、仮に想定外のことが起きても、なぜそうなったかわかります。

上位足をみて”現在値の解釈”ができるかどうかです。

現在値の解釈とは、どこから来て、どこへ向かっているのか?その障害になるものはなにか?これらがわかる能力のことです。

現在値の解釈は、シャツの第一ボタンなので、これを掛け違うと全てがズレてしまいます。

処理可能感

「なんとかなる」という感覚。

目の前の困難に対し、スキル、人脈、資金など、自分の持てる”資源”をフル活用すれば問題解決できるという感覚です。

じゃ、スキル、人脈、資金をどれも持ってない人はどうなのか?この感覚はないのか?

ボクは40代で失職して、3つとも持ち合わせてませんでしたが、この”なんとかなる”という感覚だけはありました。

とても非論理的ですがトレードに出会って「これでうまくいくことを知ってる」という感覚になれました。

いわゆる、”デジャブ(既知感)”というものです。

この未知なのに既知という感覚が、始めてもないボクを達成した気分にしてくれました。

この感覚はアントノフスキー博士の定義する”処理可能感”とはちょっと違うかもしれません。

”処理可能感”には人脈・お金・スキルといった根拠がありますが、ボクの”デジャブ(既知感)”には根拠がありません。

ただ、何も持たないボクにとって”デジャブ(既知感)”が”処理可能感”と似たような役目を果たしてくれました。

おそらく、この”デジャブ(既知感)”の背景には”アイラブミー”の感覚があります。

困難に直面している今の自分が好きかどうか。

それを乗り越える自分を英雄と思えるかどうか。

そういった感覚がサポートラインとして底堅く支えるのでしょう。

 

有意味感

「起こることは全部マル」という感覚。

現実とは出来事の”解釈”次第であることは知っていても、転んでもタダじゃ起きないと思っていても、どんなときもポジティブでいつづけることは難しいです。

感情に波があるのは人として正常だし、ずっとハイテンションで波がないヘビーメタルみたいなのは異常です。

苦しい、辛いときは、無理にネガポジ反転させず、「いま苦しいな、いま辛いな」と感じるようにしています。

そうすると、苦しい、辛いという感覚が、ただの”言葉”になって自分から剥がれ落ちていき楽になります。

感情に波があるなか、一定のモチベーションを維持するのにどうするか?

ボクは”ミッション”を持つことだと考えます。

俺はイタリアで一番の大聖堂をつくってる!というマインドのレンガ職人と、時給1000円貰えるからやってるアルバイトでは、積みあがったレンガ壁の佇まいが違うはずです。

ミッションは死ぬまで続く生きる目標みたいなものなので、ミッションの途中に何が起こっても全部マルにすることができます。

さらに、ミッションとアイデンテティ(自分らしさ)を融合できる仕事なら最高です。

高いモチベーションを保ちつつ、最高のパフォーマンスが発揮できます。

40代で失職したとき、これから先、ミッションやアイデンテティを維持しながらどう生きていこうかと考えました。

年齢的にも再就職は難しいだろうし、そもそも、就職はボクにとってミッションにも、アイデンテティにもない、やりたくないことでした。

当時は人疲れしていたので、”人と関わらず一馬力でやれること”のなかから選ぼうと思っていたところへ、友人の誘いでトレードに出会いました。

その後、ボクのアイデンテティでもある”自己表現欲求”が湧いてきて、この迷晴れFXを始めました。

トレードのベース感覚

全体把握感・処理可能感・有意味感はお互いを補完する関係にありますが、トレード技術を学ぶ上で最も重要な感覚を選ぶならどれでしょう?

ボクは”全体把握感”と考えます。

この”全体把握感”は他の2つの感覚に比べると論理的で言語化できるからです。

この”全体把握感”をベースにすることで、他の2つの感覚も活性化されます。

全体把握できれば、なんとかなる(処理可能感)と思えます。

失敗に意味がある(有意味感)と思えるのは、全体を把握したなかでの失敗だからです。

”処理可能感”や”有意味感”は感情的な側面があるので、”全体把握感”という論理的ベースがないと単なる感情論になってしまう恐れがあります。

ただ、何もない荒野に独り放りだされ、方角も何もわからない状況になったとき、論理的根拠はなくても”今の状況には何か意味がある”とか”なんとかなる”といった感覚が心の支えになることがあります。

ボクのときは、全て取り上げられたのは、これで十分な時間ができるので、新しいことを始めよというサインだという感覚が気分を明るくしてくれました。

この記事を書いていて、イタリア映画の名作、強制収容所に送られたユダヤ人の父親が幼い息子を守る物語「ライフ・イズ・ビューティフル」を思い出しました。

強制収容をゲームと思い込んだ幼子は生き延びることができましたが、病は気からというように、どんなに過酷な状況に置かれても、どんな”気分”でいるかが大事ですね。

まとめ

安全とは客観的にリスクのない状態のこと。

安心とは主観的にリスクを感じない状態のこと。

トレ-ドで安全な枚数は?と聞かれれば証拠金から”資金管理”の技術を答えられるが、安心な枚数は?と聞かれても答えられない。

”技術”がつくる安全と違い、安心は”心”がつくる感覚なので十人十色だ。

ではまず、安全を確保するにはどうしたらいいか?

安全はお金で買える。

ロッククライミングで使うカラビナやロープといった装備もお金で買うことができる。

安全は技術でもある。

安全装備に加えて、安全運転の技術があれば、二重に自動車事故のリスクを抑えることができる。

トレードの安全も同様。

”資金管理”や”逆指値”はいわば安全装置、シートベルトやエアバックのようなもの。

勝ちパターンを淡々と繰り返すトレードは安全運転技術といえる。

次に、安心を確保するにはどうしたらいいか?

安全装備や技術はお金で買うこともできるが、安心はお金じゃ買えない。

安心は”経験”でしか手に入らない。

ところが、安全止まりの人が多いから、安心まで行けた人がうまくいく。

安全×経験=安心

安全確保とはあくまで安全に登山できる装備を揃え、技術を学んだに過ぎない。

山を登るという経験にしか、未来は変えられない。

安全を確保しつつ、経験を積み、安心をつくる。

この順番で進むのが理にかなってる。